やさしい税務会計ニュース
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文書作成日:2025/11/11
国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供に「少額特例」を適用できるか

[相談]

 私は会社で経理を担当しています。
 当社(年商5,000万円)では、国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供(プラットフォーム課税対象外のもの)を受けているのですが、その取引について適格請求書(インボイス)の保存がない場合に、いわゆる「少額特例」の適用により、仕入税額控除の適用を受けることはできるのでしょうか。教えてください。

[回答]

 ご相談の国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供については、「少額特例」の適用要件を満たしていれば、インボイスの保存がなくても、帳簿のみの保存で、仕入税額控除の規定の適用を受けることができることとなります。詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

1.消費者向け電気通信利用役務の提供とは

 消費税法上、資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物の提供その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(一定の役務の提供を除きます)であって、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものを「電気通信利用役務の提供」といいます。

 国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、その電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又はその役務の提供に係る取引条件等からその役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものを「事業者向け電気通信利用役務の提供(※1)」といいます。

 また、「消費者向け電気通信利用役務の提供」とは、「電気通信利用役務の提供」のうち、「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当しないものを(便宜的に)いうとされています(※2)。

※1 「事業者向け電気通信利用役務の提供」に該当するものとしては、国税庁によれば、インターネットを介した広告の配信やインターネット上でゲームやソフトウエアの販売場所を提供するサービスなどがあるとされています。

※2 「消費者向け電気通信利用役務の提供」に該当するものとしては、国税庁によれば、インターネット等を通じて行われる電子書籍・電子新聞・音楽・映像・ソフトウエア(ゲームなどの様々なアプリケーションを含みます)の配信などがあるとされています。

2.国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供について仕入税額控除の適用を受けるための要件

 消費税法上、(プラットフォーム課税の対象外である)国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供については、国外事業者から交付される適格請求書(インボイス)の保存が仕入税額控除(※3)の適用を受けるための要件となります。

※3 売上げに係る消費税から仕入れに係る消費税を差し引く計算を「仕入税額控除」といいます。

3.「少額特例」とは

 上記2.の仕入税額控除の規定の適用を受けるための要件については、経過措置として、@基準期間(※4)における課税売上高が1億円以下である課税期間、又は、Aその特定期間(※5)における課税売上高が5,000万円以下である課税期間のうち、事業者(消費税免税事業者を除きます)が、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの間に国内において行う課税仕入れについては、その課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、帳簿のみの保存で、仕入税額控除の規定の適用を受けられると定められています。

 この経過措置が「少額特例」といわれるものですが、この少額特例は、国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供について、適格請求書(インボイス)の保存がない場合に、適格請求書発行事業者以外の者から行った課税仕入れについて、その適用を受けることができます。

 したがって、今回のご相談の国外事業者が行う消費者向け電気通信利用役務の提供についても、上記の少額特例の適用要件を満たしていれば、帳簿のみの保存で、仕入税額控除の規定の適用を受けることができることとなります。

※4 基準期間とは、法人については、原則としてその事業年度の前々事業年度をいいます。

※5 特定期間とは、その事業年度の前事業年度がある法人については、原則として、その前事業年度開始の日以後6月の期間をいいます。

[参考]
消法2、9の2、30、平成28年改正消法附則53の2、平成30年改正消令附則24の2、消基通5-8-4、国税庁質疑応答事例「いわゆる「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合の仕入税額控除」、国税庁「消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A」(令和7年6月改訂)など

※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。
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